ぽかぁんとしてしまうこと:Hatena版

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演奏の科学

まず最初に結論を書きますと、

毎回毎回同じところで躓く、毎回毎回安定したイマいち感の演奏をする人って、それがその人の科学なんじゃないか、と思うのです。

吹奏楽管弦楽はたいていそのことを「下手」と言いますが、きちんとした語彙を持ちさえすれば相手は科学的に演奏技術が向上するのではないかと思ったことに直面しました。

私は最近お菓子作りをしているのですが、最初がアイスクリーム、次がケーキのスャ塔Wの部分、そしてパンも作ってみました。

どれも「初心者でも簡単に作れる易しい○○作り」を題にしている本を参考にし、(へんだなぁ、書かれている通りに出来ないな)と思っていたのですが、だからといって高価な本を見ても専門家が多種類の材料を使って大人数に作るレシピなので参考にならず、不満に思いながらも作っております。

(慣れれば上手に作れるようになるだろう)

お菓子作りは家庭料理と違って、分量を厳密に守らなければいけない、と言われております。

家庭料理では大雑把に材料を量っても結構大丈夫なものだが菓子作りはそうはいかない、砂糖が1g違うだけで生地が膨らんだり膨らまなかったりするそうです。

私はそこまで厳密な状態になったことはありませんが、かなり多くの人が言っていて、ふーん、という感じです。

菓子作りが科学であることを指しているケースに、ケーキのスャ塔W生地を作る際、卵を攪拌し泡立て、小麦粉と砂糖を混ぜます。そこに溶かしたバターを入れるときです。

読む本読む本全てに「バターの油分が生地の泡を壊してしまうので一気に混ぜてオーブンに入れます」とあります。

私も一度、バターを入れたらみるみる生地の嵩が減っていって驚いたことがありますが、「バターの油分が生地を壊す」は菓子作りをする万人が認める科学的常識なのでしょう。

ところがこの動画、えもじょあという人のアップした

ヌガーグラッセ フランスのアイスクリーム」。

映像も綺麗だし音も素敵だし美味しそうなので作ってみましたら、

まず冒頭のアーモンドを砂糖で煮詰めるやつ。

糖分でベタベタして、こんなにさくさく切ることはできません。

まぁこれは、常温まで冷やしたらカリカリになるまで砂糖水を飛ばすのかな、と思えるのですが、次の、卵白を泡立てて沸騰した蜂蜜を入れたら、メレンゲのモコモコがなくなって水みたいにサラサラになってしまうんですよ。

BGM付きのこちらの動画

のコメント欄で「できません」と書きましたら、「できますよ?イタリアンメレンゲと同じです」と返信が来たんですが、できません。泡立て器を三十分回しても五十分回してもメレンゲには戻りません。

そこで気がついたのですが、ヤフー検索で「イタリアンメレンゲ 失敗」を調べてみますと、それなりに「できない」と相談している人がヒットして、その回答が温度だという人もいれば慣れという人も見つかります。

このエントリを最初から読んだ人なら解りますね?

ケーキのスャ塔W生地を作るとき、「バターの油分が泡を潰す」は菓子作りをする人にとって常識なわけですから、「沸騰した蜂蜜」も油分はありませんが何かしらの理由があってメレンゲの泡を潰すんですよ。

何百回何千回やってみようが、メレンゲの泡が潰れる原因が解らなければイタリアンメレンゲもこのヌガーグラッセメレンゲも作ることはできません。

それが科学です。

沸騰した蜂蜜を入れるとき、可能な限り細い入れ方をするのか?ざっくりでいいのか?

温度は高ければ高いほどいいのか?ジャストな温度があるのか?

卵白の温度は?

実は卵白と蜂蜜の割合が大事?

などなど考えるべき組み合わせはいくらでも出てきますが、

そこを解るように説明するのが「初心者向け」でして、

実は世に溢れている「初心者でも作れる易しい」本というのは、単に難しいことを書いてないだけの場合が多いのです。(えもじょあさんは自分の動画を「初心者向け」と題してはいない)

もっと考えてみますと、冒頭のアーモンド、何故砂糖水で煮詰めるのかは理由が書かれていませんね。普通はアーモンドを甘くするための味付けと思わないでしょうか?

でも砂糖水って煮詰めて、どんどん煮詰めていくと、飴になるんですよ。でもこの切るシーンに飴はありません。

またアーモンドにこれっぱかし甘みをつけたって、後で蜂蜜が100g投入されるんですよ、砂糖の甘みなんて蜂蜜の甘みにかき消されてしまいます。

砂糖と蜂蜜の甘みのハーモニー?比率が違いすぎませんかね?

これ、実は沸騰温度の問題なんじゃないかと思うのですよ。

水はどれだけ沸騰させても100℃以上にはなりませんが(厳密には98℃とかですが)、砂糖を入れると120℃くらいまで上がるのですね。蜂蜜もそうです。

その100℃以上の温度が必要だから砂糖水で煮るんじゃないかと思うのですが、まぁそれは私の想像で、真実は解りません。

吹奏楽の話に結びつけますと、

毎回毎回同じところで躓く、毎回毎回安定したイマいち感の演奏をする人って、ケーキのスャ塔W生地にバターを入れて駄目にしてしまう人、卵白を攪拌して沸騰した蜂蜜を入れて駄目にしてしまう人と同じではないかと。

で演奏が上手い人や指導者からはただ「下手だなぁ」としか言われず、自分でもどうしたらいいか解らず、延々と同じ事を繰り返して嫌気だけが募ると。

息のスピード、上下の方向とか、知識としては知ってる人が多いとは思うのですが、基礎練習の時はともかく、実際の演奏指導でそういう語彙で教えられる人、どれだけいますかね?

逆に言えばこの語彙を見つけられたら、日本の吹奏楽はもっとレベルが底上げされるんじゃないかなぁと思うのでありました。